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札幌高等裁判所 昭和39年(ネ)188号 判決 1966年4月27日

主文

原判決を左のとおり変更する。

控訴人等は被控訴人等に対し別紙物件目録記載(一)の物件につき昭和三五年五月一〇日釧路地方法務局北見支局受付第四二二九号同年三月三〇日持分権放棄により北見市とん田町三五番地中沢仁蔵のための持分所有権取得登記の抹消登記手続をせよ。

別紙物件目録記載(一)の物件につき、被控訴人中沢きゑが持分六分の二、同中沢繁、同中沢吉助、同大江サンコが各持分六分の一の所有権を有することを確認する。

被控訴人等のその余の本訴請求を棄却する。

別紙物件目録記載(二)、(三)の物件につき、控訴人中沢ムメ子が持分六分の二、同中沢純子、同中沢博、同中沢豊治、同中沢文子が各持分六分の一の所有権を有することを確認する。

控訴人等のその余の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は本訴反訴を通じ第一、二審共これを三分し、その二を控訴人等の負担とし、その一を被控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中控訴人等勝訴の部分を除きこれを取り消す。被控訴人等の本訴請求を棄却する。別紙物件目録記載(一)、(二)、(三)の各物件につき、控訴人中沢ムメ子が持分三分の一、同中沢純子、同中沢博、同中沢豊治、同中沢文子が各持分六分の一の所有権を有することを確認する(この部分については控訴状に明白には記載されていないが、控訴の趣旨及び弁論の全趣旨に徴すれば、その申立をしたものと認められる)。訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上、法律上の陳述、証拠の提出・援用、書証の認否は、次に附加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

(被控訴代理人の予備的主張)

被控訴人等が持分権を放棄したという意思表示は、被控訴人等と亡中沢仁蔵との間になされたものであるが、それは被控訴人等が真意でないことを自ら知つてなしたものであり、且つ、仁蔵において被控訴人等の真意を知つていたものであるから、右意思表示は無効である。

(右主張に対する控訴代理人の答弁)

右主張事実は否認する。

証拠(省略)

理由

当裁判所は、被控訴人等の本訴請求中、別紙物件目録記載(一)の物件につきなされた本件持分所有権取得登記の抹消登記手続を求める請求を正当、同(三)の物件につきなされた本件持分所有権取得登記の抹消登記手続を求める請求を失当と判断し、控訴人等の反訴請求中、同(一)の物件に対する控訴人等の持分所有権確認の請求を失当、同(三)の物件に対する控訴人等の持分所有権確認の請求を正当と判断するものであるが、その理由は原判決理由欄に記載してあるところと同一であるからこれを引用する(但し(三)の第一段挙示の証拠中、甲第一号証を削除し、甲第五、第六号証を附加し、右第一段認定事実に反する当審における控訴人中沢ムメ子の供述は措信しない)。

なお、附加すれば、当審における鑑定人金丸吉雄の鑑定の結果によると、甲第二号証の末尾に存する「上記の通り相違有りません」という記載は亡中沢仁蔵の筆跡であることが明瞭となつた。その記載によれば、右仁蔵は自己所有名義の田地(住宅地を含む)八反七畝三歩中三反二畝を被控訴人中沢きゑに、一反五畝を被控訴人中沢繁に、一反を被控訴人大江サンコに処分する意思をもつていたことが認められるから、同号証は原審並びに当審における被控訴人中沢繁の供述等の諸証拠と相俟つて引用にかかる原判決理由欄(三)第一段の認定事実を推定する有力な証拠となつたものというべきである。

別紙目録記載(二)の物件の所有権について、被控訴代理人は被控訴人中沢繁の所有物件であると主張し、控訴代理人は亡中沢仁蔵の所有物件であつたものを控訴人等が相続により所有するに至つたものであると主張するにつき按ずるに、原審における被控訴人中沢繁の供述により真正に成立したと認める甲第一号証、原審並びに当審における同被控訴人の尋問の結果によれば、被控訴人中沢繁は昭和三六年一〇月頃代金四万二〇〇〇円をもつて訴外佐藤得蔵に請負わせて本件地上に木造平屋柾葺物置小屋建坪三坪を建築したことが認められるが、原審証人越智秀雄の証言、当審における控訴人中沢ムメ子の尋問の結果によれば、その後亡中沢仁蔵は右建物を全部取り壊して大工一名と自己の手でもつて従前の建物の柱を利用したり、新しく買い入れた材料を使用して本件建物を建築したこと、その建物は従前は物置小屋で三坪しかなかつたものを玄関、押入れ、流し台、窓等を新たに付け加えて建坪も五坪に増加して住居用の建物となつたことが認められ、これに反する原審における被控訴人中沢繁の供述は措信し難い。右の事実によると、被控訴人中沢繁が建築した従前の建物は滅失してそれと同一性のない新たな建物が建築されたものと認められるから、本件建物は中沢仁蔵が建築し、その所有に属するものというべきである。従つて、(二)の物件が被控訴人中沢繁の所有であることを前提として控訴人等の持分所有権保存登記の抹消登記手続を求める被控訴人中沢繁の本訴請求は失当である。その反面、右仁蔵の所有であることを原因として控訴人等の相続による持分所有権の確認を求める控訴人等の反訴請求は正当である。

よつて、原判決中、別紙目録記載(一)の物件についての本訴請求を認容し、反訴請求を棄却し、同(三)の物件についての本訴請求を棄却し、反訴請求を認容した部分は相当であるが、同(二)についての本訴請求を認容し、反訴請求を棄却した部分は不当であるから原判決を右の範囲で変更すべきものとし、民事訴訟法第三八四条、第三八六条、第九六条、第九二条、第九三条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(末尾添付目録は第一審判決末尾添付目録と同一につき省略する。)

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